突然ですが、スラム街って色々と街の風景が荒れてるイメージがありますよね?
- 「カラースプレーで描かれた落書き」
- 「散乱したごみ」
- 「さび付いたトタン屋根、シャッター」
- 「割れた窓ガラス」
などなどが思い浮かびます。
こういう風景が広がる場所はなんだか治安が悪そうだな~とか、
夜道を歩くのに不安になる感じがします。
実際にそんな場所では犯罪行為が起こりやすいという理論があります。
壊れた窓理論とは(Broken Windows理論)
壊れた窓理論はラトガース大学の刑事司法校の名誉教授であるアメリカの犯罪心理学者ジョージ・ケリングが考案した理論のことで
「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」
との考え方から命名されてます。
実際にこの理論が使われている事例として、1990年代にニューヨーク市長と警察長官が「生活の質の向上」キャンペーンを行いました。
実践内容として、落書きを取り除き、道路の掃除、無賃乗車の罰金など些細なことに罰を与える法律を作ると、犯罪率が低下しました。
この成功をきっかけに世界中でこの理論をもとに犯罪率を低下するための運動が始まりました。
しかし、その研究って本当なの?科学的な裏付けないからやってみようか!
ということで、行動科学者のK・ケイゼル、S・リンデンベルグ、L・ステッシュが研究として野外実験を行いました。
割れ窓理論をやってみたら…
ケイゼルたちは、いくつかの野外実験を行い、ささやかな違反がほかの違反にどのくらい影響を受けるのか検証しました。
一つ目の実験としてショッピングモールの近くの駐輪場として使われている路地で行いました。
ターゲットは自転車を使用している買い物客です。買い物客がショッピングモールに買い物へ行っているすきに、ゴムバンドで店の広告を結びつけました。そして、その場所に落書き禁止の標識を設置しました。
戻ってきた買い物客が自分の自転車に広告が張られているのをみたら、
なんじゃこりゃ誰やったんだ!ってなると思いますが(笑)
この実験では、広告を捨てるか、持ち帰るかをみるということです。
そして、その路地の壁に落書きがない状態と落書きがある状態の二つの状況でどのような反応になるか実験しました。
結果は落書きがない場合は、広告を捨てていく人の割合は33%であったのに対し、
一方、落書きがあると、なんとその割合は69%と約2倍となったのです。
他の野外実験でも、何か些細なルールが破られていたら自分もルールを破りやすくなり、さらに別のルールも破ってしまいやすい
という実験結果が出ています。
しかも、法律で決められたルールだけではなく、警察の条例、民間企業の注意書きに対しても破られがちになることがわかっています。
割れ窓理論を活かしてなにができるか?
この研究から学べることとしては、どうでもいい些細な規則が破られている環境を放置しておくと
さらに違反なことをする人が増え、環境悪化に拍車がかかる可能性が上がるということです。
例えば学校で教室の壁に亀裂や汚れがついていたり、机や掃除用具が破損していることにより生徒の問題行動が起きやすくなったり
会社であればオフィスやデスク回りが散らかっていたりすると、業務を手抜きしたり、違反行為しやすくなる可能性が考えられますね。
では、私たちはどのようにして、このような影響を知っているうえでなにができるでしょうか?
当たり前ですが、些細なところから環境が荒れているところを地道に直していくこと、ごみが散乱していたら掃除・整理整頓すること。
そして、その環境が治っていく過程を現場の人に見てもらうことによって、相手にも「ここは綺麗にしておく場所なんだ」と思ってもらうことや、ルールをみんなで守る場所であることをわかってもらうことが現場の変化に大きく影響します。
まとめ
- ルールが破られているのを放置するとルールを破る人が増える
- とりま、掃除、物の修理、破られたルールを消し去ろう
- 環境が整っていくところを周りの人に見てもらおう。
・The Atlantic Online | March 1982 | Broken Windows | James Q. Wilson and George L. Kelling
・The Spreading of Disorder Kees Keizer*, Siegwart Lindenberg, Linda StegScience 12 Dec 2008:Vol. 322, Issue 5908, pp. 1681-1685DOI: 10.1126/science.1161405